No.2原発賠償

現状では原発賠償はされないまま終結する

 まだわかりませんよ、今の時点では東電が福島の被災者に賠償するかどうか。むろん、現在でも多少の賠償はし始めています。わたしはそんな、“涙金”レベルの賠償を言っているのではありません。
 この問題も福島県各地の代表者や協議会のみなさんに警告を発したいと思います。 

 

(1)原発補償は闇夜にカラスを見つけるようなもの
 原発補償の迷宮入りはほぼ確実です。補償請求はできるだけ急がねば、闇の中に消え去ります。なぜか。
 原発事故による賠償問題は初めてのケースだから、想像もつかない、とお考えですか? だめです、それでは。この因果関係は、かつて、各地に起こった公害訴訟問題とよく似ていて、たとえ元凶企業が特定されても、被害者側に請求権があるかどうかとなると、その算定基準がまちまちである上に、確たる損害の証拠物件が出揃わない。出揃っても、その審議の査定に時間がかかる。他地域の前例を考慮せねばならない。被害者が故人となられた場合、その請求権と因果関係が明確でないために、書類上は審査されても、支払対象が特定されず、棚上げとなるケースも出てくる。


(2)それでも算定方式はある
 こういう補償問題は細密にやればやるほど、迷宮化します。いや、迷宮入りさせるために、細かく事実調査が行われ、証拠不十分な場合に立件の対象にしないのと同様に、補償の対象外とすることもあります。ですから、査定方式については、被害者諸君はこれを会社側はもちろん、事情に同情的でない役所に任せるのは良策とはいえません。
 ではどうするか。その手順のあらましを以下に書きます。

 

  1. まず、被害者協議会の全国組織をつくる。
  2. 各地区委員を選定する。
  3. この委員会で被害状況調査基準を策定する。
  4. 各地区では、この委員を中心に被害者実態調査委員会を設立し、そこに所属する実地調査委員を選定する。
  5. その委員がブロック別に調査、集計をして、ある期限以内に報告書を作成し、それを持ち寄って調整してのち、協議会に報告し、それに基づき被害総額を算出する。
  6. もちろん、以上の行程を政府サイドとも連絡を取り合い、ここで算定された内容により、補償金額を算定し、東電の補償義務金として、国会審議へと持ち込む。
  7. 問題は、役所主導型ではなく、被害者協議会が主導です。これを統括省庁にも了解してもらい、積極的に支援してもらえる組織として確立しておくことが大事です。

 

 以上、この①~⑦のプロセスを、被害者協議会がみずから動いて補償義務を実施させない限り、上記(1)のように、補償問題は暗礁に乗り上げたまま、半永久的に支払われないまま、終わるだろう、と筆者は観測しています。

 

(3)東電の補償はなぜ、しないか?
 日本人はこの種の補償問題には慣れていない。だから、みょうに細かくやる。また便乗組をひどく嫌って、紛れ込む者を排除するために、おそろしく排外的なルールを作る傾向にある。それがために、調査に何年とかかり、そのプロセスの中で、せっかく補償の対象になっている人たちまで、その多くが離散し、老齢化して死んだり、正当な権利を有しながらも、その手続きがあまりに煩雑なために、投げ出してしまう結果を生む。東電側はそれを暗に期待している。つまり、今までの不誠実な対応ぶりから、彼らがどんな戦術に出るか、今から読める気がするのです。
 もし東電の当事者で、いや、とんでもない、早期決着をつけますよ、とでも言って、私の猜疑心に満ちたこの記述をお叱りになる人がいたら、わたしは素直に頭を垂れ、東電とはしっかりした約束を取り付けたのち、会社としての誠実さを日本全国に知らせようと思います。魚心あらば水心ですからね。
 その場合ですが、と、東電の責任者さんにはここで申し上げたい。もし私の、このブログを見たら、すぐに以下のような声明をお出しください。
 「たとえ賠償総額が何兆円になろうとも、東電は補償を絶対に履行します。東電とは、それほど、社会的信義を重んじる会社です」と。
 私は一介の警鐘文学の作家にすぎない。原発の被害者でもない。だからこのブログでのことなど、東電は構うべきではない、という判断もされるかもしれない。しかし、原発の被害者のみなさん、このブログをご覧頂いて、なるほどそうだと思われたら、上記(2)に書いたような組織をできるだけ早期に作らねばなりません。頑張ってください。
 以上、東電が補償しない? 補償する? それは、被害者の全体会の動きに掛かっています。誰かがやってくれる、ではだめです。それでは結果的に(1)のような、暗い見通しになる。被害者の方々は結局はお上に頼ってばかりいてはだめです。日本のお上は、この21世紀にになっても、諸君らが考えているほど、国民思いじゃない。やりだしたらやたら面倒な仕事は官僚たちは好みません。なぜなら、配転を繰り返して昇進するのに足手まといになるからです。
 被害者のみなさんは、祖霊まします山河をそう簡単に棄てるようでは先祖の方々に申し訳がないですよ。ねばりづよく東電と交渉を続けて、妥当な金額で賠償されるまで闘わねばなりません。それが諸君らのプライドでしょう、郷土愛でしょう。